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つれづれなるままにタイ語

タイ語の勉強&タイ関連本レビュー

書評:「物語タイの歴史ー微笑みの国の真実」

書評

中公新書の「物語」各国史シリーズのタイ版。古代史から、2006年クーデターの頃までを範囲としています。作者はタイ近現代の鉄道史専門とあって、政治史だけでなく経済史・社会史にも広く言及されています。

歴史書というものは理工書などに比べとかく筆者の考えが反映されやすく、特に近現代史に至っては同時代・同事件を扱っていても本により正反対の主張が見られることなど頻繁ですが、この本は比較的中立的な立場から書かれたのではないかと思われます。殊更な誇張化や類型化もなく、事実を淡々と述べるような良くも悪くも教科書的な語り口です。その意味では万人向けの本だと言えます。

古代史に関しては内容が薄く(そもそもタイでも史料がほとんど見つかっていない)、スコータイ朝やアユッタヤー朝も良く知られている伝説などの紹介程度で、あっと言う間に終わります。ほとんどは19世紀、特にラーマ4世以降の話がメインとなります。帯に書いてある「世渡り上手」の意味は、読んで頂ければわかると思います。特に二次大戦直後のプリーディーの話はなかなか面白いです。

1973年クーデター以降、クーデターはなぜ何度も繰り返されるのか、国王がタイ国にとってどのような役割を果たすことになったのかなど、現代タイを理解する上で必要最低限の情報はここに大体書かれています。この本の執筆後の10年間でタイ社会はまた目まぐるしい動乱に巻き込まれていくことになりますが、そうなるに至った背景はほとんどが2006年クーデターまでの時期に用意されています。タイの文化だけでなく、タイ国そのものに興味を持ち始めた方はぜひ最初の一冊として読まれるとよいかと思います。

物語タイの歴史―微笑みの国の真実 (中公新書 1913)

物語タイの歴史―微笑みの国の真実 (中公新書 1913)

 

 定価920円+税

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